「地球の歩き方」にはジャカルタ発、ジョグジャカルタ行きの始発列車は8時15分だと記載してあったのに、宿のフロントで実は7時5分発があると聞いたので、5時半頃に起床、6時過ぎに宿を出て街の中心にあるガンビル駅に向かった。宿から徒歩約15分。ガンビル駅のすぐ側には独立記念塔(モナス)、それを取り囲む広場がある。この広場には日曜早朝にも関わらず、多くの人で賑わっていた。何のために集まっているのか定かではなかったけれど、日本で日曜日6時過ぎにあれ程人出がある場所はないと思う。駅に着くとすぐに切符を購入。ただ、始発はやはり「地球の歩き方」に書いてあった通り8時15分だったので、駅で2時間近く待つ羽目になってしまった。宿のフロントがなぜ間違えたのか不思議に思いながら、駅建物内にある「DUNKIN' DONUTS」で時間を潰し、8時過ぎにプラットフォームに上がる。プラットフォームには、もちろん日本のラッシュアワーのそれとは全く異なるけれど、かなり多くの人がいた。僕のような旅行者はほとんど見当たらなく、大半が地元の人々。定刻通りにやって来た列車に乗って車内を見渡しても同様、インドネシアの鉄道はきちんと地元の人々の足として定着しているようだ。
この日利用した列車名は「Taksaka Ⅰ」、ジャカルタからジョグジャカルタまで約500kmの距離を約8時間で走り抜ける特急列車。新幹線の4分の1程度の速度だろうか。全車両指定席エクセクティフ(Eksekutif)クラス、いわゆる一等車両だけれど、それでも150,000Rp.(=1,500円)しか掛からない。一等車両は日本の特急車両ほど綺麗に整備されている訳ではないまでも、十分に耐えられるレベル。社内はエアコンが効いているし、座席もゆったり、リクライニングもする。特に、前の座席との間隔が広くて足を伸ばせるのが楽だった。
列車から見る風景は時間と共に色々と移り変わった。ジャカルタ中心部はビルがそこそこ林立しているけれど、少し外れるとスラム街を思わせるような街並みが広がっていた。バラック小屋、捨て放題のゴミ、そしてその横で屯する人々。ジャカルタ中心部では目にしなかった光景であり、この国の貧富の差の大きさの一端を垣間見た気がした。ただ、そのスラム街も通過すると、今度はのどかな田園風景が続く。日本の田舎でも見ることができるような田圃の光景なのだけれど、一点だけ大きく異なっている。田圃のすぐ横にヤシの木が生えていて、そして、働く人々が皆手作業を行なっている。こんな労働集約的農業、人件費がとてつもなく安いのだろう。
その後寝たり起きたりを繰り返していると、昼食サービスの時間となった。日本の特急列車にないサービスなのでかなり驚いたけれど、食事自体は貧相なもの。フライドチキン、野菜酢漬け、ライス、バナナと薄味で味気なかった。
昼食後もひたすら田園風景の中を走り続ける。再びうとうとしたり起きたりを繰り返し、ようやく16時半頃にジョグジャカルタに到着した。
ジョグジャカルタはジャワ島随一の観光地と聞いていたのだけれど、駅が予想外に小さく、多少拍子抜けした。ただ、駅を一歩出るとそこは観光地らしく、タクシーの運転手など客引きが多数待ち構えている。全て無視して歩を進め、街の中心部を目指した。程なく、街の目抜き通りジャラン・マリオボロに到着。小さな駅前と違って、こちらはすごい喧騒、人でごった返している。通り沿いに屋台、馬車、そしてインドネシア独特の自転車タクシー「ベチャ」が連なり、客引きや客街ちを展開。この通りを10分程歩きながら、宿を街の南外れのバックパッカー街プラウィロタマン地区で探すことに決めた。
プラウィロタマン地区までは6km近くあるので、早速「ベチャ」を利用してみることにした。「ベチャ」は自転車の前車輪の前方に客席が据え付けられ、運転者が自転車漕ぐというユニークな乗り物。一見乗り心地が悪そうだけれど、意外と酷暑の中を走り抜けると風が感じられて気持ち良かった。20分程でベチャの運転手オススメの宿メトロに到着。エアコン、ホットシャワー付きの部屋を見せてもらうと前日ジャカルタの部屋よりは格段に良いし、値段も1泊150,000Rp.(=1,500円)とそれなりにリーズナブルだったのですぐに決めた。
宿についてまずは、翌日からのスケジューリングを行なった。今回の旅のハイライトである世界遺産ボロブドゥール、プランバナンへはジョグジャカルタが拠点となるし、そして「地球の歩き方」によると東ジャワのブロモ山へのツアーも確保できるとのこと。実際その通りで、その後4日間の予定がすぐに確定した。
少し部屋で腰を落ち着けると既に18時を回っていたので、夕食も兼ねて街中に出掛けることにした。再び目抜き通りのジャラン・マリオボロにベチャを利用して向かう。途中ベチャの運転手にバティック(インドネシア特産のろうけつ染め)の店に連れて行かれ、これは運転手のコミッションのために行なわれていると分かっていながらも、迂闊にも猫の絵柄の布地を1枚買ってしまった。猫好きの母へのお土産にしよう。ジャラン・マリオボロに着くと、ブラブラしながら「地球の歩き方」にも載っているバックパッカー向けのレストラン「ニュー・スーパーマン(New Superman)」に向かった。インドネシア料理から西洋料理まで一通りのメニューを揃えている。僕は既にインドネシア料理があまり口に合わないことを察していたので、西洋風のビーフステーキを注文。ただ、何も指定しなかったら肉はウェルダンで仕上げられ硬くなっていて、イマイチだった。インドネシアン・ビーフそれ自体の味はそれ程悪くなかったので、残念。
食後はベチャに乗って真っ直ぐにホテルに帰った。ベッドに寝転ぶと、昼間列車の中で何度となく眠りに落ちていたのに、すぐに瞼が重たくなり、気付く間もなく眠りに落ちていた。
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